受け継いだ農地を守りながら、新しい茶農家の形を目指す。

早さと、クオリティが求められる粉末加工。

抹茶スイーツを食べたことがある人は多いだろう。昔は飲むだけだったお茶も、今では加工されて菓子などによく使われるようになった。ケーキやアイスクリーム、プリンやドリンクなど、抹茶(碾茶)やお茶の粉を使った製品が全国には数多くある。

ここ、であい農園では、茶の2次加工にあたる粉末加工を行っている。「早くて質が良いものを作っています。」と語る渡邉さん。美味しいお茶のスイーツやデザートはこういった加工がなければ出来上がらないのだ。

特に抹茶は、粒度と言われる細かさに厳しい業者が多いという。クオリティが求められる加工でかつ早く納品するために小規模だからこその工夫をし、顧客に喜ばれている。今ではハーブや大豆などの依頼も来るなど、であい農園の粉末加工は知られるようになった。

粉末加工
金谷の茶農家

ふと、覚えた疑問。なんのためにお茶を作っているんだろう・・・

元々は茶農家として大代地区での茶栽培を主としていたであい農園が、2次加工業を始めたきっかけは、渡邉さんの中に生まれたある疑問だった。

「自分が作っているお茶を、誰が飲んでいて、どういうものを必要としているのか分からなかったんです。」

それまではあまり疑問を持たず、茶農家として毎年良いお茶、美味しいお茶を作ることを目指してきた。でも10年ほど前から茶の単価が下がり始めて、茶を栽培することについてあらためて考えてみたという。「茶葉の卸先が欲しいものをただ作り続けていました。今考えれば、それは義務感だけだったと思う。」渡邉さんはそう語る。

義務感で目の前の仕事を続けてしまうのは、茶農家に限ることではないかもしれない。自分の仕事やそれによってできた商品が、選ばれ、誰かの手に渡り、どう喜ばれているのか。特に生産者という立場だと知る機会が持てないことも多い。

ー 自分の商売が、世の中に必要とされなくなった気がした。

そう感じた時、あることを決めた。それは、お茶だけにとらわれない農家の形を目指すこと。渡邉さんが「脱茶化」と呼ぶのは、地元の名産である緑茶の生産だけでなく、より広い視点での商売を目指すこと。その一つが前述した粉末加工でもある。

茶農家
粉末加工

必要とされ、役立てることは何だろうか。 

茶農家を継ぐ前にはシステムエンジニアをしていたという渡邉さん。PCの修理などは得意だという。農家の仲間から、PCの故障で困った時に声をかけられるようにもなった。茶の営業をしながらPCの相談を受けることもある。そうやって役立てることを見つけていっている。

茶の価格が下がり、今までのような需要を感じられなくなったからこそ、粉末加工やPC相談など、お茶にとらわれない”必要とされること”を探し出したのだろう。時代が変わり、ものの価値や需要が変わる現代において、自分の得意としていることを活かしていく渡邉さんの視点はとても必要なことだと思った。 

金谷のお茶
茶農家と金谷の茶園

目の届く農地をしっかり維持ながら、茶農家の新しい形をつくる。

さらに、今後は地元でとれた茶の販売にも力を入れていきたいという。緑茶にこだわらず、ウーロン茶や紅茶にも挑戦したい。楽しんでもらう工夫も考えているようだ。取材中にいただいた地元産の無農薬の茶はとても新鮮な香りがした。

「目の届く農地をしっかり維持することも役割だと思ってます。」

であい農園の向かいの県道を挟んですぐの茶畑に立ちながら、そう語った。目の前の仕事を義務感でやるのではなく、必要とされ、役立てることを考え、茶農家の新しい形をつくっていこう。そういう意気込みを感じ、そしてとても頼もしく感じた。金谷から新しい商品が生まれていく過程を、ぜひこの仕事手帖サイトでも紹介したいと思う。その時がとても楽しみである。

茶生産・加工・販売

であい農園

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