川根茶の歴史に学び川根茶のこれからを創る、茶舗『朝日園』。

江戸時代から茶畑が?朝日園の川根茶の歴史は古い。

「はっきりとは分からないですが、おおよそ江戸時代には茶畑があったんですよ。年貢の代わりに茶を納めていました。」

本家が茶畑で栽培を続けるかたわら、次男だった朝比奈さんの祖父が昭和23年に朝日園茶舗として卸販売を始めたという。その後、海軍にいたご縁で東北の宮城県に川根茶を卸し、祖父は82、3歳までずっと通っていたのだそうだ。宮城県内での茶卸のシェアは一時期は一番になるほどだった。そんな昔から遠く東北の人が川根茶を飲んでいたなんて、とても興味深い歴史である。

現在、朝日園は小売・通販事業を主としている。祖父が卸販売をする間、祖母が家の小さな軒先で茶の販売を始めたのがきっかけ。

「おばあちゃん、いる?」

そういって祖母に会いに来るのは、全国からダムの建設に来ていた人達。彼らは人柄のいい祖母のファンになり、お土産にと茶を買っていった。なんだか話を聞いているだけで、きっと和やかだっただろうその店の雰囲気を想像してしまう。

祖母の小さなお店をきっかけに、川根茶の美味しさを知った人たちから、ここの茶を買いたいと電話がかかってくるようになったのが今の小売事業の始まりだ。

川根の茶舗朝日園
昔ながらの金色の川根茶

味に厳しい仕入れ。朝日園に美味い茶が並ぶ理由とは。

「昔から味には厳しかったんです。」

茶師が茶の品質鑑定やブレンドを行う場所を”拝見場”という。朝日園の拝見場に仕入れた茶が並ぶ際、農家さんは「うちが一番でないと」と競い合ったそうだ。そんな生産者の切磋琢磨した茶が揃うということが、朝日園に美味い茶が並ぶ理由の一つなのだろう。

茶の美味しさを測るものとして、賞がある。川根茶品評会で県知事賞を3部門とっているのは朝日園のみ。金賞を受賞したという金色透明の浅蒸し茶をいただいた。畑ではなく一本の木から摘むこの茶は、旨味成分を多く含みなんとも深い味わいだ。しかしこの川根茶の美味しさを守り続けることは、簡単ではないようだ。農家の後継者は減り、このような茶を作れる人を育てることは課題であり目標だという。

「味で贔屓にされてきた川根茶だからこそ、若手育成はやらねばならないこと。」

そう語る朝比奈さんからは、長い歴史を持つ茶舗経営者の意気込みを感じた。

川根の茶舗朝日園
川根の茶舗朝日園

突然すぎた世代交代を経て、人の縁に恵まれてきた。

「70歳になった父から言われたのは、突然のことでした。」

自分が40歳になったら、と漠然と考えていたという会社を引き継ぐということ。先代から事業を渡されたのは、その2年前の38歳の時。思いがけず早くなった世代交代は苦労も多かったという。

歴史があるからこそ、難しい事業承継。それでも今までやってこれたのは、人の縁に恵まれたことだと思うと語る朝比奈さん。

それ以外にも東日本震災の際の風評被害は事業への影響も大きかった。こういった茶が売れない時期にこそ、工夫することで今までと違ったアイデアは生まれるのだろう。

世代交代や試練を経て、現在は「お茶バーガー」や「お茶漬け」など、飲むお茶以外にも様々な商品開発にも取り組んでいる。そこには他社や学校と一緒に商品開発に関わる奥様の協力も大きい。

そんな奥様が丁寧に淹れてくれたお茶からは、朝日園の茶の美味さと香りだけではなく、おもてなしの心が伝わってきた。

川根の茶舗朝日園
川根の茶舗朝日園のお茶

川根茶のこれから。お茶と人のご縁を広げていく。

「日本の方にもっともっとお茶の良さを知ってもらいたい。そして世界にも川根茶を広げていきたいですね。」

医者が自分で日常的に飲むほど、健康に良いとされるお茶。丁寧に急須で入れるお茶もあれば、ティーバッグなど手軽な飲み方もある。どんな形でもお茶と関わってくれると嬉しいと朝日奈さんは言う。

美味しいお茶は、来客への何よりのおもてなしだ。お茶をお出しする場には、たくさんの出会いがあり、良いご縁ができる人も少なくないだろう。

朝比奈さんの祖母が軒先で始めた小さな店舗に人が集まってきたように、商品開発やおもてなしの心を通して、これからも川根茶と人とのご縁を広げていく朝日園。美味しい川根茶で繋がるご縁が、さらに世界に広がっていくことを期待したい。

茶舗

株式会社朝日園

本店 〒428-0104 静岡県島田市川根町家山372-1
TEL:0547-53-2058
FAX:0547-53-2163
https://tea-asahien.com/