有名企業が続々都心を離れる!?東京にこだわらない、これからの働き方とは

2021年を迎えて数日で、いわゆる有名企業の本社移転という話がチラホラ聞こえてくるようになりました。その理由自体には企業それぞれの事情があるわけなのですが、感度の高い、しかも規模の大きな企業が大きく変化していくことは端からみていて大変興味深いこと。

今回、ほぼ同じタイミングで入ってきた有名企業の本社移転とはこちら
・クックパッド
・D&DEPARTMENT

でした。先に知ったのはD&Dさんでしたが、どちらもユニークな活動に長らく注目してきた会社だったので興味津々。なお、現在公式にリリースされている以上の情報は(当然)なく、あくまでも個人的な感想ベースで以下続きますことご了承ください。

目次

クックパッド、恵比寿から横浜みなとみらいへ

クックパッドは、ネットで膨大なレシピが見られるコミュニティ型のウェブサービスを運営している会社。2014年から恵比寿ガーデンプレイスに置いていた本社を、2021年5月に横浜みなとみらいへ移転するんだそう。

それだけなら「へー、都心を離れるんだね(でも横浜だと地方というほどではないねえ)」という感じなのだけど、みなとみらいの『WeWork』に入るんだそうで、え?どういうこと?というところで気になりました。

WeWorkといえば、世界中に展開している、簡単に言うとシェアオフィスの先駆け。一時はどうのこうのといろんな噂も流れましたが、ユーザーにとってはとても便利で使いやすいんだとか。

オーシャンゲートみなとみらい
引用:https://www.wework.com/ja-JP/buildings/ocean-gate-minatomirai--yokohama

いや、これを遠目で見る限りでは「結局シャレシャレ都会オフィスでかわらないじゃーん。」という感じですが、東京都心と横浜では空気感が違います。さらに、ビフォーコロナ時代だったら、「横浜に引っ越し?自社ビル建てるの?」という流れだったような気がします。

クックパッドって、みなさんご存知、事業内容や規模を見る限りずいぶんと大きな会社です。
そんな企業が出張所ではなく、本社自体をシェアオフィスであるWeWorkに持っていくってどういうこと??まず気にになったのはそこです。

おそらく、シェアオフィスとはいえ、他社の人も出入りできるフリースペースではなく当然クローズドなワンフロアを借りるのでしょうけど…それってこれまで通りオフィスビルのフロアを賃貸するのとどう違うのでしょう?何かメリットがあってのことに違いない。実際の狙いはわかりませんが、ワークスペースの概念もどんどん変化しているのかもしれません。

クックパッドの先進的な働き方は過去にもメディアにたくさん取り上げられいます。果てしなく見渡せるワンフロアに部署の垣根なくデスクがずらっと並んで、オープンな雰囲気。靴を脱いでクッションにもたれてリラックスしながら会議をやったり、フィットネスバイクを漕ぎながらシステムを組むエンジニアがいたりと、まさに革新的なオフィス。『ザ・おしゃれIT企業』といった様相で大いに感心させられたのを覚えています。

料理のサービスらしくオフィスには立派なキッチンが備え付けられていて、社員同士でランチを作って食べるというフレンドリーな風景は、クックパッド社の象徴的な風景と言えます。

出典:リクナビNEXTジャーナル 社員が「自然と」ユーザー目線に立つ仕掛けは、ランチタイムにあった|クックパッド株式会社

企画からアプリやサイトの運営というアウトプットまで業務領域はものすごく広いわけですが、その全機能をほぼ内製していると思われ、サービスの規模からして従業員も多いし、重要書類やら過去データやらもたくさんありそう。引っ越し大変そうです…。

時代は変わっても、ポリシーは変わらない。

クックパッドは前述の通り、ネットでレシピが見られるという『便利さ』に加え、見るだけでなくさらに個人が投稿できるという『参加型』にすることで、お料理界に一大ブームを起こした立役者。一方で、一般参加型であるがゆえに不確実な情報が出てしまって度々炎上という側面もありました。
またお手軽レシピということが浸透し切ったがゆえに「お手軽料理ではなくプロの手の込んだ料理を知りたい」とか「ちゃんと基礎を知りたい」などのユーザーのニーズが現れたり。ただ、それはクックパッドというサービスがあったからこそ。

また、テキストでレシピを見るという形態から、動画が一般化してきて『クラシル』など動画で見られる料理レシピサービスが登場しました。これもスマホやネット回線の進化による、IT業界では避けて通れない事象。
今ではレシピサイトは山ほどありますが、その潮流を作ったのはクックパッドと言ってもまったく過言ではないはず

毎日3食作る主婦にとっては何を作るかを考えるだけでシンドイわけで、家族に「何食べたい?」って聞いても「なんでもいい」って言われるし…(本当毎日ご苦労様です…)。そんな主婦の強い味方であることは昔も今も変わらないんですよね。

毎日家族や自分のために料理をするという需要は変わらないけど、時代や環境に合わせ、必要とされる形は変わっていく。それはサービスだけでなく、会社そのものも、従業員の働き方も変わっていくということなのでしょう。

そして、変わっていく組織のカタチ

横浜、そしてWeWorkに入居することについてクックパッド社は、以下のように伝えています。

移転を予定しています「WeWork オーシャンゲートみなとみらい」は、拡張性の高い働き方を実現できる仕組みが整っており、従業員がプロダクト開発を行う上で、オフィスに集まるメリットを最大限引き出す設計が迅速に実現できることから、移転予定先として最適だと考えています。

引用:https://info.cookpad.com/pr/news/press_2021_0122

と仰っています。…おお!わかるようなわからないような…!

まあ要は、今後引き続きリモートが主体となるのか、ある程度今までのような働き方に戻っていくのか、それ以外の部分でも、会社として今後も柔軟に変化していくだろうことを踏まえると、これまで通り恵比寿ガーデンプレイスに居続けるのもなんかね、ということでしょうかね。

WeWorkの賃貸契約がどういうものかわかりませんが、少なくとも融通がきいたり、これまでのビルのフロア賃貸よりも柔軟な動きがとりやすいというメリットがあったには違いありません。勝手な想像でしかないけど、なんだか楽しそう〜!

そして、引っ越しに伴って新しい情報サイトが開設されましたとのこと。

本社移転の決定とともに、クックパッドのこれからの働き方を定義し、あわせてそれらを発信するウェブサイト『Cookpad Ideas』を開設いたしました。

引用:https://info.cookpad.com/pr/news/press_2021_0122

こちらのサイト、まだティザーというような状態ですが、以下のようなことを宣言されております。各項目の詳細は以下のプレスリリースを見てみてくださいね。

https://www.wework.com/ja-JP/buildings/ocean-gate-minatomirai–yokohama

■クックパッドのこれからの働き方
1.働く場所:料理に関わる「つくり手」や生活者と密接な環境
2.オフィス環境:サービス開発に最適化したオフィス設計
3.働き方:社会状況に合わせた柔軟なオフィス運用
4.暮らし方 : 職住近接を支援する諸制度の運用

なるほど、なるほど。見出しを書き出しただけでも頷けます。
やはり『働く』と『暮らす』は切っても切り離せないということですよね。もちろんクックパッドという会社の扱っている商材(?)が家庭料理であるという理由も大きいわけですけど。

ということで、詳細はまだ公開されていませんが、新しい企業のカタチ、働き方のカタチ、さらにはこれからのウェブサービスのカタチを見せてくれそうです。5月の移転後のリリースを楽しみに待つとしましょう!

D&DEPARTMENTは、いい場所「探してます」

こちらの情報もちょっと前に出たばかり。
D&DEPARTMENTといえばロングライフデザインをテーマに、昔からあるもの、変わらないよいものの価値を再発見するような取り組みのお店を経営。また、全国を旅しながら現地のものづくりとつくり手を丁寧に取材した冊子を発行している会社です。

デザイナーのナガオカケンメイさんが主宰する会社で、静岡市にも街から若干離れたところにカフェ&ショップがありましたが、数年前に惜しまれながらクローズ。

こちらは、本社移転自体をプロジェクト化していました。さすがです!なんというか、”らしさ”が出ています。

https://www.d-department.com/item/DD_TEXT_REPORT_25757.html

「その土地らしさ」や「長く続くものづくり」の大切さを伝えていく活動を強化するために、その土地に根を張るのに、よりふさわしいエリアを探しています。

引用:D&DEPARTMENT本社および本店の移転先を探します! https://www.d-department.com/item/DD_TEXT_REPORT_25757.html

とのことで、地域の産業や観光により深くコミットして貢献したい、というようなことだそうです。これもまた、長らくものづくりやつくり手を尊重してきたD&Dさんらしいな、とも思いました。


ただ、ちょっと気になったこと。
これまで東京・世田谷という『特に地域の色が色濃くない』街に本社を置いていたからこそ、全国どこに行ってもフラットな視点でいられたのでは。どこかの特定の地域に居を移すとなると、熱量などが偏ったりしないんだろうか…と個人的には思ったりしました。だって、その町に腰を据えて日々を送るとなると、どんなに意識していても、どうしても主観的にならざるを得ません。情が湧く、というか。

具体的には、歴史的な建物が残っていて、そこをリノベーションして使いたい、とか、昔ながらの産地や問屋街など、ものづくりの文化や歴史があるエリアをご所望の模様。

こうなってくると、場合によっては地方からの誘致合戦ともなりやしないか?と心配にもなりますが、d47と言う取り組みもやっていますし、地方と向き合ってきた彼らの活動の中から自ずと場所は定まっていくのではないかな、という気もしなくもない。

「渋谷ヒカリエ」という渋谷駅直結の商業施設にもショップと展示スペースという自社の発信フロアを持っているので、発信拠点は都心に持った上で、他拠点的な活動になるのではないかな、と想像しました。

我こそは、という自治体は手を挙げてみてもいいかも

大々的に募集!とはいえ、ある程度の目星はつけてるのでは??と、ナガオカケンメイさんのtwitterを拝見すると。

場所の条件は、東京から2時間圏内とのこと!これで一気に候補地が狭まりましたね。
条件がわかったら、いざ、レッツ・グーグルマップ!

2時間以内に限定すると、そこそこ行けそうでいて、実は意外とハードルが上がることがわかりました。

例えば、新幹線に乗っている時間だけで見ると、東京ー京都間が2時間ちょっとです。しかし東京駅で寝起きしてないし、京都駅新幹線ホームにオフィスを構えるのはどう考えても難しそうです。

そう考えると、静岡は東京通勤圏内なので立地的におすすめではありますね!

あれ?でも確かナガオカケンメイさんのご自宅は、建築デザイナーの藤原さんが富士宮に建てて、今もお住まいだったはず。noteにも書かれていました。

僕は今、月の半分を静岡県富士宮市で過ごしています。約2,000坪の土地に平家の家をスターネットの馬場さん、ケンブリッジの森の藤原さんに建てて頂きました。

引用:ナガオカケンメイさんのnote

自宅も本社も静岡では、ご本人的にはちょっと面白みに欠けるから、別のところに置くのでは?というのがわたしの予想です。(自分だったらそうする)

遠くても訪れてみたい、楽しそうな本社になりそうです

ちなみに、新本社のプランとしては

物販店舗、カフェ、ファクトリー機能を物件状況や立地状況に合わせて組み込みたい。宿泊施設を併設したい。1室でも10室でも。

とのこと。やはり、宿泊施設ですよ。わたくし以前にも『山形がアツい!』なんて言いましたが、地方で人を呼ぶには宿泊施設あるとなおよいです。パッと行ってパッと帰る、では、わざわざ時間をかけて地方を訪れても、そこ特有の時間の流れを満喫することはなかなかできません。

なので、地方創生には宿泊はマストじゃないかと、私も思っていたので、答え合わせができたようで嬉しいです。

一瞬の高揚を提供する打ち上げ花火的なアミューズメント施設ではなく、長い間受け継がれてきた、そしてこれからも守っていきたい文化とともにあるものづくりに注目するD&Dさん。とても居心地のいい場所を作ってくれるんじゃないかと期待が高まります。

ちなみに、いつ頃できるのかというと、

・2021年の夏までには引っ越したい。

とのこと。おお、結構すぐですね??
1月にリリースして、探して、リノベして、引っ越しとなると、結構ハードですね。自分が社員でこのプロジェクトメンバーだったらと思うと、結構ヒヤヒヤします。。

ともあれ、こちらもどこにいくのか、どんな新しい視点の場所ができあがるのか、期待が高まります。

クックパッドとD&D、真逆の展開なのが面白い

どちらも思い切った本社の移転。
ただ手狭になったから広いフロアへ移るという物理的な引っ越しではなくて、会社の方針や今後の展開の変化とともに、あるいはそのための準備とも言える引っ越し。

そして本来淡々とした事務的なお知らせになるはずなのに、エンタメになっちゃってるというところが面白い。

クックパッドの方は、これまでの概念を覆すようなリリースをして驚かせました。一方D&DEPARTMENTの方は、どこにいくのかわからない、これから皆さんと作り上げていく、というプロセスを共有するところで驚かせました。

規模が大きかったり、長く続く会社がそれまでのやり方を更新したり刷新したりしていくのは大変なことです。多くの会社というのは時間が経つごとにどんどん柔軟とは真逆になってしまう。そうせざるを得ないことも多いのでしょう。

だから、新しいことをやって時代を変えていくのは、いつだって若き起業家だ。
そう思わされてきましたが、いや、そうではないんだってことを見せてくれそうで、これからも目が離せませんね。

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